コラム
テストステロン注射を始めるとき、多くの方が気にされるのが「何がよくなるのか」「いつから変わるのか」です。学会の手引きにまとめられた研究結果をもとに、領域ごとに期待できること・はっきりしないこと、変化を感じるまでの時期、効果が出ないときの判断を解説します。
監修:森田 將 医師(日本泌尿器科学会 専門医・指導医/日本内分泌学会 専門医/医学博士)|最終確認 2026年10月5日
テストステロン補充療法で変化が出るまでの期間は、体の領域によって異なります。学会の手引きでは、性欲や勃起などの性機能の症状は、治療開始後3か月以内に改善がみられるとされています。一方、筋肉や骨、血糖などは1年前後の期間で調べた研究が中心で、効果がはっきりしない領域もあります。そのため3か月ごとに症状と血液検査で効果を確かめ、十分に治療しても改善しなければ中止を検討します。効果の感じ方には個人差があり、改善しない場合もあります。
テストステロンは性機能だけでなく、筋肉や骨、代謝、気分など体の広い範囲にかかわるホルモンです。そのため補充療法の効果も、領域ごとに研究されてきました。
学会の手引きでは、プラセボ(有効成分を含まない薬)と比べた研究を領域ごとに集め、次のようにまとめています。改善が示されている領域もあれば、研究によって結果が分かれ、はっきりしない領域もあります。
| 領域 | 手引きのまとめ |
|---|---|
| 性機能(勃起) | 国際勃起機能スコア(IIEF)で評価した勃起能を改善する |
| 健康関連QOL(活力など) | AMSスコアで評価した生活の質を改善する |
| 筋肉・体脂肪 | 筋肉量を増やし、体脂肪を減らす可能性がある |
| 血糖・代謝 | 2型糖尿病の方の血糖コントロールに有効 |
| 気分(うつ症状) | 効果について一定の見解は得られていない |
| 骨 | 骨密度を増やす効果は、複数の研究をまとめた解析では認められていない |
| 排尿 | 排尿の症状(下部尿路症状)の悪化は認められない |
ただし手引きは、研究ごとに対象となった人の年齢や持病、使った薬、治療期間が異なるため、結果の受け止め方には注意が必要だとしています。上の表で改善が示されている領域でも、効果を認めなかった研究があります。
また、補充療法の主な目的は症状を和らげて生活の質(QOL)を改善することです。検査の数値を上げること自体が目的ではありません。
手引きでは、治療で症状が改善するまでの期間は、体の領域ごとに異なるとされています。
手引きで時期がはっきり示されているのは性機能で、性欲や勃起などの症状は治療開始後3か月以内に改善がみられるとされています。一方で、筋肉や体脂肪、骨、血糖などの効果を調べた研究は、半年から1年前後の治療期間で評価されたものが中心です。生活の質(QOL)の研究も、治療期間は52週(約1年)までのものです。
| 領域 | 手引きに書かれている期間 |
|---|---|
| 性機能(性欲・勃起) | 治療開始後3か月以内に改善がみられる |
| 勃起能(複数の研究のまとめ) | 平均40週の治療を調べた解析で、プラセボより改善 |
| 健康関連QOL | 52週までの研究で改善が示されている |
| 骨 | 多くは1年までの研究。骨密度が増えた研究と増えなかった研究がある |
つまり、「何週目から筋肉が増える」といった決まった時期があるわけではありません。手引きにも、領域ごとに効果が出るまでの決まった週数は示されていません。まず3か月で性機能などの症状の変化をみて、その後も定期的に確かめていくのが基本の考え方です。
「テストステロン注射の効果期間」という言葉には、2つの意味があります。ひとつは1回の注射がどのくらい効いているかで、注射の4〜7日後に血中の遊離テストステロンが最も高くなり、その後ゆるやかに下がります。もうひとつはこの記事で扱う治療を続けたときに症状がいつ頃変わるかです。
1回の注射の効き目が続く期間と注射の間隔については、エナルモンデポーの解説で詳しく説明しています。
手引きでは、LOH症候群の症状のうちテストステロンの低下と最も結びつきが強いのが性機能の症状とされ、なかでも性欲の低下が典型的な症状です。
テストステロンと性欲の関係は多くの研究で確かめられています。補充療法による性欲の改善の度合いは、もともとのテストステロンの不足が大きいほど大きいことが、複数の研究をまとめた解析で示されています。
個々の研究では、効果を認めたもの、一部で認めたもの、認めなかったものがあり、結果はさまざまです。一方で、約2,300人を含む14の研究をまとめた解析では、平均40週の治療で勃起機能のスコアがプラセボより改善し、もともとのテストステロン値が低い人ほど改善の度合いが大きかったと報告されています。ED診療ガイドライン(第3版)でも、テストステロンの低下をともなうEDには補充療法が強く推奨されています。
ED治療薬(PDE5阻害薬)を使っている方に補充療法を加えたときの効果は、上乗せ効果を認めなかった報告と、有用とする解析があり、結果が分かれています。EDが主な悩みの場合は、ED治療薬だけで治療する選択肢もあります。どの治療を選ぶかは、症状と検査結果をみて医師と相談して決めます。
射精やオルガズムについては、テストステロンが大きく下がっている方で改善がみられたとの報告がありますが、研究の数は多くありません。
疲れやすさや意欲の低下、「絶頂期はすぎた」と感じるといった症状は、AMSスコアなどの質問票で評価されます。手引きでは、補充療法はAMSスコアで評価した健康関連QOLを改善するとまとめられています。
ただし、研究ごとにみると改善した項目はさまざまです。AMSスコアを使った7つの研究のうち、性機能の項目が改善したのは4つ、心理面の項目が改善したのは2つでした。別の質問票(SF-36)を使った7つの研究では、2つで体の面のスコアが改善した一方、ほかの面のスコアには改善がみられませんでした。
複数の研究をまとめた解析では、AMSスコアの合計や生活の質の改善が報告されています。研究の期間は52週(約1年)までで、手引きはより大規模で長期の研究が必要だとしています。
治療前にAMSスコアをつけておくと、治療の前後で症状がどう変わったかを比べやすくなります。
気分の落ち込みに対する効果は、研究によって結果が大きく分かれています。手引きが集めた2007年以降の研究では、効果ありが6つ、一部で効果ありが2つ、効果なしが6つでした。
複数の研究をまとめた解析では、うつ症状が改善したとする報告もあります。それでも手引きは、対象となった人や治療法、評価の方法が研究ごとに異なることから、うつ症状に対する効果については一定の見解は得られておらず、さらなる検討が必要と結論づけています。
男性更年期の気分の落ち込みは、うつ病と見分けがつきにくいことが知られています。気分の落ち込みが強い場合や、日常生活に支障がある場合は、精神科・心療内科での診療が優先されることがあります。見分け方は男性更年期(LOH症候群)の解説をご覧ください。
手引きでは、補充療法は筋肉量を増やし、体脂肪を減らす可能性があるとまとめられています。集められた30の研究のうち23で、筋肉量の増加か脂肪量の減少のどちらかに効果がみられ、100人以上を対象にした6つの研究ではすべてで効果がありました。
一方で、次のような点も報告されています。
手引きでは、体重の管理を含む生活習慣の改善が治療の第一選択とされています。補充療法は運動や食事の見直しの代わりではなく、あわせて行うものと考えてください。有酸素運動(1回40〜60分・週3日以上)はテストステロンを上げるのにも有効とされています。
代謝への効果は、2型糖尿病やメタボリックシンドロームのある方を対象にした研究が多くあります。
2型糖尿病のある方では、複数の研究をまとめた解析で、補充療法がプラセボより血糖コントロールを改善し、中性脂肪を下げたと報告されています。手引きもこの結果から、2型糖尿病の方の血糖コントロールに有効とまとめています。
一方で、インスリンの効きやすさ(インスリン抵抗性)については、改善した研究と変化がなかった研究がおよそ半数ずつでした。また、善玉(HDL)コレステロールが下がったという報告も散見されます。
糖尿病の治療を受けている方は、補充療法を始めても主治医の治療を続けてください。持病や服用中のお薬は、診察の際に必ずお知らせください。
テストステロンの低下は骨量の低下とも関連しますが、補充療法で骨密度が増えるかについては、結果が分かれています。手引きが集めた研究では、骨密度の増加に有効、一部有効、無効の報告があり、複数の研究をまとめた解析では、骨密度を増やす効果は認められていません。
骨密度が増えた研究では、太ももの付け根の骨よりも腰の骨(腰椎)で増える割合が高い傾向がありました。多くは1年までの研究で、骨折が減るかどうかを確かめた研究はありません。
骨粗しょう症の治療を目的とする場合は、骨粗しょう症の治療を行っている医療機関にご相談ください。
テストステロンは前立腺にも作用するため、排尿への影響が気になる方もいらっしゃいます。手引きでは、補充療法で前立腺が大きくなったという報告と、変化がなかったという報告があります(いずれも1年以内の研究)。
それでも、排尿の症状(下部尿路症状)が悪化することは認められていないとまとめられています。尿の勢いが増したという研究もあります。
治療中は、前立腺の状態を確かめるために定期的な採血(PSA)を行います。治療前の確認と定期採血の内容はテストステロン補充療法のページをご覧ください。
手引きでは、治療開始後は3か月ごとに効果を判定し、副作用に注意しながら続けるかどうかを判断するとしています。長期にわたる治療では、開始後3か月・6か月・12か月、その後は少なくとも1年ごとに症状を評価します。
| 時期 | 確認すること |
|---|---|
| 開始後3か月 | 性機能などの症状の変化、血液検査(多血症・PSAなど) |
| 6か月・12か月 | 各領域の症状の変化と副作用 |
| その後 | 少なくとも1年ごとに評価し、続けるかを相談 |
欧米のガイドラインには、十分な治療にもかかわらず症状が改善しない場合は補充療法を中止すべきという共通の考え方があります。一部のガイドラインは、効果を判断するための最短の治療期間として6か月を示しています。続けるか、やめるかは、医師と患者さんが共通の理解をもったうえで決めることとされています。
性欲の改善の度合いは不足の程度と関係し、勃起機能ももともとの値が低い人ほど改善が大きいと報告されています。治療前に午前中の採血で値を確かめておくことが、効果を見きわめる出発点になります。
肥満はテストステロンを下げる大きな要因で、減量によってテストステロン値が改善することが示されています。手引きは、体重の管理を含む生活習慣の改善を治療の第一選択としています。有酸素運動を1回40〜60分・週3日以上行うことも、テストステロンを上げるのに有効とされています。
効果は検査の数値だけでなく、症状の変化で判断します。治療前と3か月ごとにAMSスコアなどで症状をつけておくと、変化を医師と共有しやすくなります。
当院でのテストステロン検査とテストステロン補充療法は自由診療です。健康保険は適用されず、費用は全額自己負担となります。治療開始までの費用の目安は17,600円(税込)です(テストステロン検査セット11,000円+250mg注射1回6,600円)。
当院で使用する男性ホルモン注射(エナルモンデポー)は国内で承認された医薬品ですが、承認されている効能・効果は「男子性腺機能不全(類宦官症)、造精機能障害による男子不妊症、再生不良性貧血、骨髄線維症、腎性貧血」です。加齢にともなうテストステロンの低下(LOH症候群)に対する使用は、学会の手引きに沿って医師が判断して行いますが、承認された効能・効果の範囲外での使用(適応外使用)にあたる場合があります。
国内で承認された医薬品を、国内の医薬品卸売販売業者から購入しています。
テストステロンを補充する注射薬として、国内ではエナルモンデポーを含むテストステロンエナント酸エステル製剤が承認されています(効能・効果は上記のとおりです)。
米国ではテストステロン製剤が性腺機能低下症の治療薬として承認されています。一方で米国食品医薬品局(FDA)は、加齢だけを原因とするテストステロン低下に対する有効性・安全性は確立していないとしています。
適応外使用の場合、万一重い副作用が起きても医薬品副作用被害救済制度の対象にならないことがあります。
多血症、精子をつくる働きの低下・精巣の萎縮、肝機能の数値の異常、ニキビ、脱毛、注射部位の痛み・しこりなどがあります。前立腺がんなど男性ホルモンで進行するがんがある方は使用できません。効果の感じ方には個人差があり、改善しない場合もあります。
新橋銀座スウィフトクリニックでは、テストステロンの検査とテストステロン補充療法を行っています。新橋駅から徒歩1分、銀座駅からは銀座線で1駅(約2分)です。平日は21時まで、土日祝は10時から18時まで診療しています。
初回はテストステロン検査セット(11,000円)で、テストステロン値・PSA・血算・肝機能を確認します。テストステロン値は午前中に高く出るため、土日祝の午前中のご来院をおすすめしています。医師が治療の適否を判断したうえで、治療を行う場合は2回目のご来院から注射を始め、3か月ごとに効果と副作用を一緒に確認します。
料金と診療の流れは新橋・銀座のテストステロン補充療法のページをご覧ください。
『LOH症候群(加齢男性・性腺機能低下症)診療の手引き』(日本泌尿器科学会・日本メンズヘルス医学会、2022年)(日本泌尿器科学会のサイトで公開)
本記事の効果・期間に関する記載は、上記の手引きの「テストステロン補充療法の方法」「テストステロン補充療法の効果」などの章にもとづいています。治療の適否と効果の判断は、診察と検査の結果をもとに医師が行います。
森田 將(もりた まさし)
新橋銀座スウィフトクリニック 監修医師
記事の内容は医師が確認していますが、症状や治療の選び方は人によって異なります。個別の診断・治療については診察でご相談ください。
体の領域によって異なります。学会の手引きでは、性欲や勃起などの性機能の症状は、治療開始後3か月以内に改善がみられるとされています。筋肉や体脂肪、血糖、骨などは1年前後の期間で調べた研究が中心です。変化の感じ方には個人差があり、改善しない場合もあるため、3か月ごとに症状と血液検査で効果を確かめます。
使用するテストステロンエナント酸エステル(エナルモンデポー)は、注射した筋肉から少しずつ吸収され、手引きでは注射の4〜7日後に血中の遊離テストステロンが最も高くなるとされています。その後はゆるやかに下がるため、2〜4週間ごとに注射します。詳しくはエナルモンデポーの解説をご覧ください。
手引きでは、補充療法は筋肉量を増やし、体脂肪を減らす可能性があるとまとめられています。ただし筋力については、増えたという報告と差がなかったという報告があり、体重が増えた研究もあります。手引きは生活習慣の改善を治療の基本としており、運動や食事の見直しとあわせて考える治療です。
研究によって結果が分かれており、手引きではうつ症状への効果について一定の見解は得られていないとされています。気分の落ち込みが強い場合や、日常生活に支障がある場合は、精神科・心療内科での診療が優先されることがあります。
治療を始めてから3か月ごとに、症状の変化と血液検査の結果を医師と一緒に確認します。欧米のガイドラインには十分に治療しても症状が改善しない場合は中止すべきという共通の考え方があり、当院でも続けるかどうかを相談して決めます。症状の原因がほかにないか(睡眠不足、うつ病、睡眠時無呼吸など)もあわせて確認します。
テストステロンが低いEDの方には、補充療法が治療の選択肢になるとされています。ED治療薬(PDE5阻害薬)に補充療法を加えたときの効果は、上乗せ効果を認めなかった報告と、有用とする解析があり、結果が分かれています。どちらを使うか、併用するかは、症状と検査結果をみて医師が判断します。
手引きでは、日本人を含むアジア人は男性ホルモンの受け取りやすさに体質的な差があるため、値が基準以上でも効果がある可能性があるとしています。一方で、値が基準以上の人だけを対象に安全性と効果を確かめた研究はなく、日本人での報告もないとされています。このため、その場合は副作用と効果をより慎重に確認しながら治療を検討します。
新橋銀座スウィフトクリニック(新橋駅から徒歩1分・銀座駅から銀座線で1駅)でご相談いただけます。初回はテストステロン検査セット(11,000円)で、テストステロン値・PSA・血算・肝機能を確認します。料金と診療の流れは新橋・銀座のテストステロン補充療法のページをご覧ください。