コラム
健康診断や男性更年期の相談でテストステロンを測ると、「総テストステロン」「遊離テストステロン」という2つの値が出てきます。学会の手引きをもとに、基準値の数字がどこから来ているのか、年齢による違い、採血の時間で数値が変わる理由、結果を見るときの注意点を解説します。
監修:森田 將 医師(日本泌尿器科学会 専門医・指導医/日本内分泌学会 専門医/医学博士)|最終確認 2026年10月25日
学会の手引き(2022年)の診断の目安は、総テストステロン250ng/dL未満、または遊離テストステロン7.5pg/mL未満です。まず総テストステロンを測り、それが250ng/dL以上のときに遊離テストステロンを補助的に使います。テストステロンは朝に高く夕方に下がるため、採血は午前8〜11時が望ましく、多くのガイドラインは日を変えて2回測ることを勧めています。ただし手引きは、数値だけで線を引かず、症状とあわせて総合的に判断することが大切だとしています。
男性のテストステロンは、95%が精巣でつくられます。血液の中では、多くがたんぱく質と結びついた状態で運ばれています。
これらをすべて合わせたものが総テストステロン(TT)、結びついていない部分だけを測ったものが遊離テストステロン(FT)です。検査結果では、総テストステロンは ng/dL(または ng/mL)、遊離テストステロンは pg/mL という単位で表されます。
2022年に改訂された手引きでは、国際的な基準にあわせてまず総テストステロンを測り、遊離テストステロンは補助的に使うことになりました。以前の手引き(2007年版)は、遊離テストステロンを中心に診断していました。
手引きの診断の流れでは、総テストステロンと遊離テストステロンを次のように使います。
| 検査の値 | 手引きでの扱い |
|---|---|
| 総テストステロン 250ng/dL未満 | LOH症候群と診断する目安 |
| 総テストステロン 250ng/dL以上 | 遊離テストステロンを測って判断する |
| 遊離テストステロン 7.5pg/mL未満 | LOH症候群と診断する目安(測り方を問わない) |
| 遊離テストステロン 7.5pg/mL以上 | 数値にかかわらず、症状とあわせて総合的に判断する |
総テストステロンの250ng/dLは、海外のガイドラインが健康な男性の分布から正常値を決めていることにならい、日本の健康な男性を調べた結果から妥当とされた値です。遊離テストステロンの7.5pg/mLは、LOH症候群の対象となる30〜40代の男性の平均から大きく外れる値(平均−2SD)をもとにしています。
2007年版の手引きは遊離テストステロンだけで判断し、8.5pg/mL未満を低い値、8.5〜11.8pg/mLを境界域としていました。その後、2015年に従来の遊離テストステロンの検査キットの生産が終わり、別の方法(ELISA法)での測定に切り替わったことや、海外では総テストステロンが診断の基本になっていることから、2022年に現在の目安に改められました。古い資料やサイトで「8.5」「11.8」という数字を見かけるのはこのためです。
日本人の健康な男性1,143人(20〜77歳)の総テストステロンを年代別にまとめた結果が、手引きに紹介されています。
| 年代 | 平均 | 下限の目安(平均−2SD) |
|---|---|---|
| 20代 | 498ng/dL | 247ng/dL |
| 30代 | 430ng/dL | 217ng/dL |
| 40代 | 420ng/dL | 195ng/dL |
| 50代 | 391ng/dL | 184ng/dL |
| 60代 | 383ng/dL | 180ng/dL |
| 70代 | 384ng/dL | 190ng/dL |
表のとおり、総テストステロンの平均は20代から30代で下がったあと、70代まではゆるやかにしか下がりません。手引きでは、総テストステロンの年代別の平均は高齢になっても20代の平均の80%程度までしか下がらないのに対し、遊離テストステロンは年齢とともにほぼ一直線に下がり、20代の平均の50%程度まで下がるとされています。
つまり、総テストステロンが年齢相応に見えても、遊離テストステロンは下がっていることがあります。手引きが総テストステロンを基本にしながら遊離テストステロンを補助として残しているのは、このためです。
なお、手引きの診断の目安(250ng/dL・7.5pg/mL)は年齢で分けていません。上の表は年代ごとの分布を示したもので、年齢別の診断基準ではありません。
テストステロンは朝に高く、夕方に下がるホルモンです。手引きによると、夕方4時の総テストステロンは朝8時と比べて、30代で76%、70代で89%まで下がります。このため、採血は血液中の濃度が最も高くなる午前8〜11時が望ましいとされています。
食事の影響もあります。ブドウ糖をとると総テストステロンが平均で15〜30%下がることが知られており、多くのガイドラインは空腹時の採血を勧めています。
さらにテストステロンは、日によって、季節によっても変動します。そのため多くのガイドラインは、午前中の空腹時に少なくとも2回(4週間あけるのが望ましい)測ることを勧めています。
午後の採血では、実際より低めに出ることがあります。結果を見るときは、採血した時間帯もあわせて確認することが大切です。当院は平日は14時から、土日祝は10時から診療しているため、テストステロンの検査では土日祝の午前中のご来院をおすすめしています。
総テストステロンの約40%はSHBGと結びついています。そのため、SHBGが増えたり減ったりする状態では、総テストステロンの値が遊離テストステロンの実際を映さないことがあります。
たとえば肥満や糖尿病ではSHBGが減るため、総テストステロンが低く出やすくなります。反対に、加齢や肝臓の病気ではSHBGが増え、遊離テストステロンが下がっていても総テストステロンは保たれていることがあります。
| SHBGが | 主な状態・お薬 |
|---|---|
| 増える | 加齢、肝硬変・肝炎、甲状腺機能亢進症、HIV感染、エストロゲン、抗けいれん薬 |
| 減る | 肥満、糖尿病、ステロイド(グルココルチコイド)、黄体ホルモン、ネフローゼ症候群、甲状腺機能低下症、先端巨大症 |
SHBGの検査は日本の保険診療では認められていないため、手引きでは総テストステロン・遊離テストステロン・LH(後述)をあわせて測り、総合的に判断するとしています。持病や服用中のお薬は、検査の際に必ずお知らせください。
「遊離テストステロン」で調べると、海外の情報では65〜100pg/mLといった、日本の目安(7.5pg/mL)よりずっと大きな数字が出てきます。これは測り方がまったく違うためです。
日本人の健康な男性498人で両方を比べた研究では、計算で求めた値の平均は58.7pg/mL、直接測った値の平均は8.3pg/mLで、およそ7倍の差がありました。両者はよく相関しているため、日本の方法で測った値を日本の目安で読むぶんには問題ないとされています。
一方、手引きは、日本の方法で測った遊離テストステロンが理論上の濃度の1/7〜1/8にとどまり、海外では直接測る方法の値が信頼されていないことにもふれています。遊離テストステロンを補助的な扱いにした理由のひとつです。
総テストステロンの目安も国や団体で異なり、手引きによると海外のガイドラインでは231〜350ng/dLの範囲に分かれています(米国泌尿器科学会は300ng/dL未満、欧州泌尿器科学会は231ng/dL未満、米国内分泌学会は264ng/dL未満など)。どの値が正しいという合意は、世界的にもまだありません。
テストステロンが低いとき、その原因が精巣にあるのか、脳(視床下部・下垂体)からの指令にあるのかを見分けるために、手引きではLH(黄体形成ホルモン)の測定が必要だとしています。LHは脳から出て、精巣にテストステロンをつくるよう指示するホルモンです。
手引きは、総テストステロンと遊離テストステロンがともに低く、LHが上がっていない場合は、加齢以外に2型糖尿病や肥満などの要因がないか注意するよう述べています。肥満の方は減量によって総テストステロン・遊離テストステロンがともに改善することが示されており、補充療法を行うかは一人ひとり判断することになります。減量や運動の目安はテストステロンを増やす方法で解説しています。
なお、LHの基準値は測定する方法によって異なります。検査結果は、その検査機関の基準値とあわせて読む必要があります。
手引きでは、テストステロン値の低さと症状の関係について、次のような報告を紹介しています。性欲や活力の低下は総テストステロン約430ng/dL未満、うつ状態や2型糖尿病は約290ng/dL未満、EDは約230ng/dL未満で多くみられたというものです。
ただし手引きは、症状とテストステロン値は必ずしも相関しないため、あくまで参考にとどめるとしています。値が低くても症状のない人もいれば、値が目安より高くても症状に悩む人もいます。
手引きは、テストステロン値と症状はなだらかに変わるもので、目安の数字でLOH症候群かどうかを二つに分けるのは少し無理があるとしています。例として「総テストステロンが249ng/dLか251ng/dLかで診断が変わるかといえば、そうではない」と書かれています。
手引きでは、男性ホルモンの受け取りやすさには体質的な差があるため、値が基準以上でも症状がある人には補充療法が有効な可能性があるとしています。一方で、値が基準以上の人だけを対象に安全性と効果を確かめた研究はなく、日本人での報告もありません。効果の感じ方には個人差があり、治療の適否は症状と検査結果をあわせて医師が判断します。症状の見方はAMSスコアでのセルフチェックをご覧ください。
補充療法を検討するときは、テストステロンの値だけでなく、治療を始めても安全かどうかを確かめる検査も行います。
前立腺がんがある方は、補充療法でがんが悪化するおそれがあるため治療を行えません。手引きでは治療前のPSAの測定を勧めており、PSA 2.0ng/mL未満を治療開始の基準としています。2.0以上4.0ng/mL未満の場合は慎重に検討したうえで治療を考え、4.0ng/mL以上の場合や前立腺がんを疑う所見がある場合は、専門医に相談し、がんの可能性が否定された場合に限り治療を考えるとしています。
テストステロンには赤血球を増やす働きがあり、補充療法で多血症(赤血球が増えすぎて血液が濃くなる状態)が起こることがあります。海外の多くのガイドラインは治療前にヘモグロビンとヘマトクリット(血液に占める赤血球の割合)を測ることを勧めており、ヘマトクリットが高い場合(米国内分泌学会は48%超、欧州泌尿器科学会などは54%超)には補充療法を行わないよう提案しているものもあります。
補充療法を始めたあとも、定期的な採血が欠かせません。手引きでは次の点が示されています。
当院では治療中の方に3か月ごとの定期採血(血算・PSA・肝機能)を受けていただき、症状の変化とあわせて治療を続けるかどうかを確認しています。副作用の内容と定期採血の料金はテストステロン補充療法のページに、治療を続けたときの症状の変化と確認の時期はテストステロン注射の効果はいつから?にまとめています。
当院でのテストステロン検査とテストステロン補充療法は自由診療です。健康保険は適用されず、費用は全額自己負担となります。治療開始までの費用の目安は17,600円(税込)です(テストステロン検査セット11,000円+250mg注射1回6,600円)。
当院で使用する男性ホルモン注射(エナルモンデポー)は国内で承認された医薬品ですが、承認されている効能・効果は「男子性腺機能不全(類宦官症)、造精機能障害による男子不妊症、再生不良性貧血、骨髄線維症、腎性貧血」です。加齢にともなうテストステロンの低下(LOH症候群)に対する使用は、学会の手引きに沿って医師が判断して行いますが、承認された効能・効果の範囲外での使用(適応外使用)にあたる場合があります。
国内で承認された医薬品を、国内の医薬品卸売販売業者から購入しています。
テストステロンを補充する注射薬として、国内ではエナルモンデポーを含むテストステロンエナント酸エステル製剤が承認されています(効能・効果は上記のとおりです)。
米国ではテストステロン製剤が性腺機能低下症の治療薬として承認されています。一方で米国食品医薬品局(FDA)は、加齢だけを原因とするテストステロン低下に対する有効性・安全性は確立していないとしています。
適応外使用の場合、万一重い副作用が起きても医薬品副作用被害救済制度の対象にならないことがあります。
多血症、精子をつくる働きの低下・精巣の萎縮、肝機能の数値の異常、ニキビ、脱毛、注射部位の痛み・しこりなどがあります。前立腺がんなど男性ホルモンで進行するがんがある方は使用できません。効果の感じ方には個人差があり、改善しない場合もあります。
新橋銀座スウィフトクリニックでは、テストステロンの検査とテストステロン補充療法を行っています。新橋駅から徒歩1分、銀座駅からは銀座線で1駅(約2分)です。平日は21時まで、土日祝は10時から18時まで診療しています。
初回はテストステロン検査セット(11,000円)で、遊離テストステロン・総テストステロン・PSA・血算・肝機能を測り、AMSスコアで症状を確認します。テストステロン値は午前中に高く出るため、土日祝の午前中のご来院をおすすめしています。結果をもとに医師が治療の適否を判断し、治療を行う場合は2回目のご来院から注射を始めます。
料金と診療の流れは新橋・銀座のテストステロン補充療法のページをご覧ください。
『LOH症候群(加齢男性・性腺機能低下症)診療の手引き』(日本泌尿器科学会・日本メンズヘルス医学会、2022年)(日本泌尿器科学会のサイトで公開)
本記事の基準値・検査に関する記載は、上記の手引きの「LOHの概念・病態の概要」「診断基準」「テストステロン測定の臨床的意義」「欧米におけるガイドライン」「テストステロン補充療法の方法」「テストステロン補充療法の副作用」の章にもとづいています。検査結果の解釈と治療の適否の判断は、診察と検査の結果をもとに医師が行います。
森田 將(もりた まさし)
新橋銀座スウィフトクリニック 監修医師
記事の内容は医師が確認していますが、症状や治療の選び方は人によって異なります。個別の診断・治療については診察でご相談ください。
学会の手引き(2022年)では、総テストステロン250ng/dL未満、または遊離テストステロン7.5pg/mL未満を男性ホルモンが低い状態(LOH症候群)の診断の目安としています。日本人の健康な男性(20〜77歳)を調べた研究では、総テストステロンの平均は約435ng/dLでした。ただし手引きは、測定値だけでなく症状とあわせて総合的に判断することが大切だとしています。
手引きの診断の目安は年齢で分けていません。日本人の研究では、総テストステロンの平均は20代で約500ng/dL、40〜70代でも380〜420ng/dL程度で、年齢による下がり方は緩やかでした。一方、遊離テストステロンは年齢とともにはっきり下がるとされています。
テストステロンは朝に高く夕方に下がるため、手引きでは午前8〜11時の採血が望ましいとされています。多くのガイドラインは空腹時の採血を勧めています。午後の採血では実際より低く出ることがあります。当院は土日祝は10時から診療しているため、土日祝の午前中のご来院をおすすめしています。
測り方が違うためです。日本の遊離テストステロンは検査キットで直接測る方法で、海外ではほかの検査値から計算する方法が使われています。日本人の健康な男性を調べた研究では、計算で求めた値は直接測った値のおよそ7倍でした。海外の基準(65〜100pg/mL)と日本の数値をそのまま比べることはできません。
テストステロンは1日の中でも日によっても変動します。多くのガイドラインは日を変えて2回測ることを勧めています。また手引きは、値が目安をわずかに下回るかどうかで白黒をつけることには無理があるとしています。症状、ほかの病気や服用中のお薬、体重なども含めて、治療が必要かどうかを医師が判断します。
手引きでは、男性ホルモンの受け取りやすさには体質的な差があるため、値が基準以上でも症状があれば補充療法が有効な可能性があるとしています。一方で、値が基準以上の人だけを対象に安全性と効果を確かめた研究はなく、日本人での報告もありません。その場合は症状の原因がほかにないかも確かめ、副作用と効果をより慎重に確認しながら検討します。
加齢のほか、肥満や2型糖尿病、睡眠障害、一部のお薬(ステロイドなど)、全身の病気などがテストステロンを下げる要因になります。手引きでは、肥満の方は減量によって総テストステロン・遊離テストステロンがともに改善するとされています。
新橋銀座スウィフトクリニック(新橋駅から徒歩1分・銀座駅から銀座線で1駅)で受けられます。テストステロン検査セット(11,000円)で、遊離テストステロン・総テストステロン・PSA・血算・肝機能を確認します。料金と診療の流れは新橋・銀座のテストステロン補充療法のページをご覧ください。